市営住宅に入りやすい人とは?
優遇される世帯と、当選確率を上げる方法
更新: 2026-08-26 (自治体別の落選回数優遇の実調査を追加) / 制度は変わります。応募前に必ずお住まいの自治体の最新の募集案内をご確認ください。
市営住宅・都営住宅などの公営住宅は抽選が基本ですが、「誰が申し込んでも同じ確率」ではありません。制度上、当たりやすくなる人(優遇対象)がはっきり決まっており、さらに応募先の選び方でも倍率は桁ごと変わります。この記事では、公営住宅法の枠組みをもとに「入りやすい人」の条件を整理し、当選確率を上げる具体的な方法をまとめます。
- 優遇の対象世帯(障害者・高齢者・ひとり親・多子世帯など)にあてはまる
- 倍率の低い住戸(築古・エレベーターなし・バス便など)を選べる
- 落選回数の優遇を積み上げている(あきらめずに応募を続けている)
大前提:収入基準を満たしていること
公営住宅は「住宅に困窮する低額所得者」のための制度です(公営住宅法第1条)。申込みには収入基準があり、世帯の「政令月収(月収額)」が基準以下である必要があります。
- 一般の世帯(本来階層):政令月収 158,000円以下
- 裁量階層(後述の障害者・高齢者など):政令月収 214,000円以下まで緩和されることが多い
政令月収は給与の額面ではなく、年間所得から各種控除を引いて12で割った額です。ここが重要なポイントで、計算の途中で障害者控除(1人につき27万円、特別障害者は40万円)や同居者・扶養の控除が引かれます。つまり障害のある世帯は、同じ収入でも政令月収が低く計算され、基準を満たしやすい構造になっています。
※ 基準額は自治体の条例で異なる場合があります。障害年金などの非課税収入は原則、政令月収の計算に含まれません(自治体の募集案内で要確認)。
自分の世帯がこの基準に収まるかは、公営住宅の収入基準(政令月収)判定計算機で計算できます。年収と世帯構成、障害者手帳の有無を入れるだけで、政令月収と本来階層・裁量階層のどちらに収まるか、基準まであと何円の余裕があるかまで出ます。
優遇される世帯(裁量階層・優先入居)
公営住宅法の施行令と国の通知は、特に居住の安定確保が必要な世帯を定めています。おおむね次の属性が対象です。
| 属性 | 典型的な扱い |
|---|---|
| 障害者のいる世帯(身体・精神・知的) | 裁量階層(収入基準の緩和)+抽選優遇の対象。対象等級は自治体で異なる(例:身体1〜4級、精神1〜3級など) |
| 高齢者世帯(60歳以上) | 裁量階層+優遇対象。単身入居も可 |
| ひとり親世帯(母子・父子) | 優先入居の対象。倍率優遇やポイント加点 |
| 多子世帯(子ども3人以上など) | 優先入居の対象 |
| 小学校就学前の子がいる世帯 | 裁量階層に含む自治体が多い |
| DV被害者・犯罪被害者 | 優先入居や目的外使用による特別な入居枠の対象 |
| 生活保護受給世帯・著しい低所得 | ポイント方式で困窮度加点の対象になることが多い |
自分がどれに該当するかは、複数該当ならさらに有利になる自治体もあります(例:障害×ひとり親)。
優遇のしくみは3タイプ
「優遇」と一口に言っても、自治体によってしくみが違います。大きく3タイプです。
① 倍率優遇(抽選のくじが増える)
抽選で当せん番号を複数持てる方式です。たとえば東京都営住宅では対象世帯の当せんチャンスを5倍・7倍にする優遇があります。「くじを5枚・7枚引ける」イメージです。当選確率シミュレーターで、優遇ありの実際の確率を計算できます。
② ポイント方式(困窮度の点数で決まる)
抽選ではなく、住宅困窮度を点数化して高い順に入居する方式です。障害・立退き要求・家賃負担率・子どもの数などが加点対象になります。「運」ではなく「困っている度合い」で決まるため、該当項目が多い人は抽選より確実です。
③ 落選回数優遇(落ち続けた人が有利になる)
落選するたびに次回の当選確率が上がる方式です。落選の記録自体が資産になるため、「応募し続けること」が最も確実な戦略になります。自治体によっては落選●回で別枠扱いになることもあります。何回落ちたら・くじがいくつ増えるのかは自治体で大きく違うので、10自治体を横に並べた表にしました。
※ どのタイプをどの組み合わせで使うかは自治体ごとに違います。募集案内(申込のしおり)の「優遇」「特例」のページを必ず確認してください。
自治体別:落選が何回たまると有利になるのか【10自治体の実際】
③の「落選回数優遇」は、制度の説明はどこでも見つかりますが、「自分の市では何回落ちたら、いくつくじが増えるのか」を横に並べた表がどこにもありません。各自治体は自分の分しか公表しないためです。本サイトの対象12都市について、各自治体・住宅供給公社の公表資料を1件ずつ当たって数値を書き出しました(調査日 2026-08-26)。
| 自治体 | 優遇が始まる落選回数 | もらえる抽選番号(くじ)の数 | 落選を数える期間 |
|---|---|---|---|
| 札幌市 | 公表ページで落選回数優遇の記載を確認できず(世帯状況による複数交付はあり) | ||
| 仙台市 | 未確認(次回の更新で追加します) | ||
| さいたま市 | 公表ページで確認できず(募集期間中に配布される「入居者募集の案内」で要確認) | ||
| 千葉市 | 未確認(次回の更新で追加します) | ||
| 東京都(都営) | 落選回数による優遇は無し | 優遇は世帯区分のみ。甲優遇=5個、乙優遇=7個 | — |
| 川崎市 | 5回 | 5倍(令和5年度以前は「5年以上落選」で30倍だった) | 過去2年間(令和6年度は経過措置で過去5年間) |
| 横浜市 | 公表ページで落選回数優遇の記載を確認できず(優遇は「特認組」=子育て世帯など) | ||
| 名古屋市 | 4回 | 4〜7回=2個/8〜11回=4個/12〜19回=8個/20回以上=10個 | 直近24回 |
| 京都市 | 11回(単身者向け住宅は9回) | くじが増えるのではなく「多回数落選者優先選考」という別枠で選考 | 前回の公募までの通算 |
| 大阪市 | 11回 | くじが増えるのではなく「11回落選実績保有者向け募集」という別枠(4月・9月) | 定期募集・親子近居募集の通算 |
| 神戸市 | 5回 | 4回以下=1個/5回以上=3個/10回以上=4個/15回以上=5個/20回以上=6個/25回以上=7個/30回以上=8個 被災者資格対象者・優先枠対象者はこれに各+2個相当(2〜10個) | 平成15年5月定時募集以降の通算 |
| 福岡市 | 4回(申込が5回目から) | 5〜8回目=2個/9〜12回目=4個/13〜16回目=8個/17〜20回目=10個/21〜25回目=15個/26〜30回目=20個/31〜35回目=25個/36回目以上=30個 | 通算の申込回数 |
| (参考)北九州市 | 3回 | 3〜5回=2玉/6〜11回=4玉/12〜17回=6玉/18回以上=8玉 | 直前6年間 |
※ 「未確認」は制度が無いという意味ではありません。公表ページで確認できなかったものです。推測で数値を埋めることはしていません。
※ 優遇のくじ数と、障害者・ひとり親などの世帯区分による優遇は別建ての自治体が多く、両方に当てはまれば重なります(重複の可否は自治体で異なります)。
この表から読めること(4点)
- 優遇が始まる回数が3回〜11回まで開いている。確認できた自治体では北九州市の3回が最も早く、京都市・大阪市の11回が最も遅く、同じ「落ち続けた人を助ける制度」でも入口が3倍以上違います。
- 最大まで積んだときの強さも桁が違う。福岡市は36回目以上の申込で抽選番号30個、名古屋市は20回以上で10個、神戸市・北九州市は8個が上限です。一方、東京都(都営)の定期募集には落選回数による優遇そのものがありません(都営で有利になるのは世帯区分の甲5倍・乙7倍だけ)。
- 「何回」を数える期間も違う。名古屋市は直近24回、北九州市は直前6年間、川崎市は過去2年間(令和6年度のみ経過措置で過去5年間)、神戸市は平成15年5月以降の通算です。期間が区切られている自治体では、間を空けて応募すると古い落選が落ちて優遇が減ります。
- いちばん見落とされやすい落とし穴=辞退でリセット。神戸市では、当選または補欠繰上になった後に辞退・棄権すると落選回数の履歴が0回に戻り、それまで積み上げた倍率優遇が消えます(平成21年5月定時募集以降)。「とりあえず申し込んで、当たったら考える」は、多回数落選の優遇を狙う人にとっては最も高くつく選択になりえます。川崎市のように優遇の申請に「抽選番号通知書(受付番号票)5年分」の提出を求める自治体もあるため、落選の通知は捨てないでください。
次に見るもの自分の落選回数と優遇倍率を入れて「あと何回で当たる見込みか」を出すなら、当選確率シミュレーターと各都市ページの応募回数シミュレーター(例:大阪市)が使えます。
この表の出典(自治体別)
- 東京都住宅政策本部「優遇抽せんについて(定期募集)」 juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp
- 川崎市「令和6年度から市営住宅入居募集制度を一部変更します」 city.kawasaki.jp
- 名古屋市「市営住宅の一般募集案内」 city.nagoya.jp
- 京都公営住宅ポータルサイト「公営住宅の概要(多回数落選者優先選考)」 jutakukanri.city.kyoto.lg.jp
- 大阪市「11回落選実績保有者向けの入居者募集(公営住宅・改良住宅)について」 city.osaka.lg.jp
- 神戸市「神戸市営住宅 入居申込案内書」(抽選倍率優遇制度について・一般住宅) city.kobe.lg.jp
- 福岡市住宅供給公社「定期募集/抽選方式 お申込み資格(優遇世帯)」 nicety.or.jp
- 北九州市住宅供給公社「多数回落選者優遇措置」 jkk-kitakyushu.jp
- 横浜市「市営住宅の入居者募集」 city.yokohama.lg.jp/札幌市住宅管理公社「市営住宅に関するQ&A」 s-j-k.or.jp/さいたま市「市営住宅募集概要」 city.saitama.lg.jp(いずれも落選回数優遇の記載を確認できず)
出典(フクシル https://fukushiru.com/articles/koei-hairiyasui.html )を明記していただければ、この表の転載は自由です。リンクは相手の判断にお任せします。制度は募集回ごとに変わるため、応募の際は必ず最新の募集案内をご確認ください。
「入りやすい住戸」を選ぶ——倍率は住戸で桁が変わる
同じ市内でも、応募倍率は数百倍の住戸と1倍未満(応募割れ)の住戸が同時に存在します。倍率を下げる要因はどの都市でもほぼ共通です。
- 駅から遠い・バス便の団地
- 築年数が古い(昭和築など)
- エレベーターのない中層階以上
- 間取りが世帯構成に合いにくい住戸
「応募割れ」は理屈ではなく実際に起きています。東京都では、申込者ゼロで募集割れした都営住宅を2022〜2026年の定期募集16回分から数え、区市町別・住宅別に一覧にしました(確認できただけで1,360件・577住宅・38区市町)。
実際の倍率データは都市別にまとめています。狙い目住戸の傾向と、住戸条件で倍率を補正する計算機つきです。
単身者は入りやすい?——年齢と事情で分かれる
単身入居には制限があります。多くの自治体で共通する枠組みは次のとおりです。
- 60歳以上:単身で申込可
- 障害のある方(身体・精神・知的。等級要件あり):60歳未満でも単身で申込可。ただし常時の介護が必要な場合は在宅で介護が受けられることが条件になることが多い
- 生活保護受給者・DV被害者など:単身可とする自治体が多い
- 上記に該当しない60歳未満の単身者:申込不可の自治体が多数派
注意点として、単身向け住戸(1DK等)は供給が少なく、倍率は世帯向けより高くなりがちです。単身可=入りやすい、ではありません。ここでも「築古・EVなし」などの住戸選びが効きます。
落ちたときにやること(次回の当選確率を上げる)
- 落選ハガキ・記録を保管する——落選回数優遇の証明になります
- 応募先を倍率の低い住戸に切り替える——人気住戸に応募し続けるのが最も非効率です
- 募集の種類を変えてみる——定期募集のほかに、常時募集・随時募集(応募割れ住戸の先着順)を行う自治体もあります
- 優遇の申請漏れを確認する——手帳の等級や世帯状況の優遇は、自己申告しないと適用されないことがあります
当選したら次は引っ越し——業者の比較で費用は数万円変わります
公営住宅は入居指定日までに引っ越しが必要です。1社に決める前に複数社の見積もりを取ると、同じ荷物量でも料金に大きな差が出ます(無料)。
引越し侍で無料一括見積もり →よくある質問
Q. 市営住宅に入りやすい人はどんな人?
A. 収入基準を満たしたうえで、①優遇対象世帯(障害者・高齢者・ひとり親・多子世帯・DV被害者など)にあてはまる、②倍率の低い住戸を選べる、③落選回数の優遇を積んでいる——この3つを多く満たす人です。
Q. 障害者手帳があると当たりやすい?
A. 多くの自治体で有利になります。倍率優遇・ポイント加点の対象になるほか、収入基準の計算でも障害者控除が引かれるため基準を満たしやすくなります。対象等級は自治体ごとに異なります。
Q. 単身でも入れる?
A. 60歳以上の方や障害のある方などは単身可の自治体が多いです。60歳未満で特別な事情のない単身者は申込不可が多数派です。
Q. 何回も落ちたらどうなる?
A. 落選回数優遇のある自治体では、落ちるほど次回の当選確率が上がります。記録を保管し、応募を続けてください。
Q. 何回落ちたら優遇される?(自治体別)
A. 大きく違います。公表資料を確認できた範囲では、北九州市3回・名古屋市と福岡市4回・神戸市と川崎市5回・京都市と大阪市11回で、東京都(都営)には落選回数による優遇自体がありません。回数ごとのくじの数と、回数を数える期間は自治体別の表にまとめました。
Q. 当選を辞退したら、これまでの落選回数はどうなる?
A. 自治体によっては0回にリセットされます。神戸市では当選・補欠繰上の辞退・棄権で落選回数の履歴が消え、積み上げた倍率優遇を失います(平成21年5月定時募集以降)。「とりあえず当たってから考える」が高くつく場合があるので、辞退の前に募集案内で確認してください。
Q. 公営住宅(市営・都営)の募集はいつ?
A. 多くの自治体は「定期募集」を年に数回(春・夏・秋・冬など)決まった時期に行い、募集開始に合わせて申込者が集中します。時期・回数は自治体で異なり、たとえば東京都営住宅は例年5月・8月・11月・2月ごろの年4回が中心です。定期募集のほかに、応募が付かなかった住戸を先着順で埋める「常時募集・随時募集」を設ける自治体もあり、こちらは倍率が低く狙い目です。正確な日程は必ずお住まいの自治体(住宅供給公社)の募集案内でご確認ください。
出典・参考
- 国土交通省「公営住宅制度の概要」 mlit.go.jp
- 公営住宅法・公営住宅法施行令(e-Gov法令検索) laws.e-gov.go.jp
- 東京都住宅供給公社「都営住宅 申込資格・優遇抽せん」 to-kousya.or.jp
- 各都市の応募状況・募集案内(都市別まとめの各記事に出典を明記)
本記事は制度の一般的な枠組みの解説です。優遇の対象・倍率・収入基準は自治体の条例と募集回で異なります。応募の際は必ずお住まいの自治体の最新の「申込のしおり」をご確認ください。