生活保護の申請は、
どこで何割が却下されているか
最終更新:2026-09-17 / 厚生労働省「被保護者調査(月次調査・確定値)」第18表・第9表(令和6年度)を集計。都道府県・指定都市・中核市の129機関
生活保護は国の制度で、基準も全国同じです。それでも申請が却下される割合は自治体でまるで違います。令和6年度の全国平均は8.28%ですが、年300件以上の申請がある機関で見ると1.7%から23.4%まで約13.5倍の開きがあります。この数字は厚生労働省が毎年公表しているのに、自治体ごとに並べた表はどこにも出ていません。だから作りました。
先に読んでください「却下率が低い=審査が甘い」ではありません。却下率の分母は申請までたどり着いた人だけです。窓口で申請書を渡さずに帰した場合、その人は分母にも分子にも入らないので、却下率はかえって下がります。逆に、申請を広く受け付けている自治体では、通らない見込みの申請も受理されるぶん却下率は上がります。
だからこのページは、却下率と一緒に「人口千人あたり何件の申請が起きているか」を必ず並べています。実測すると、この2つの相関は-0.15しかありません(ほぼ無関係)。片方から、もう片方を推測することはできません。
① 全国の却下率は6年上がり続けている
申請そのものも増えていますが、却下はそれ以上のペースで増えています。取下げは逆に減っています。
| 年度 | 申請件数 | 取下げ | 取下げ率 | 却下 | 却下率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和元年度(2019) | 223,042 | 11,020 | 4.94% | 15,007 | 6.73% |
| 令和2年度(2020) | 228,102 | 11,742 | 5.15% | 15,510 | 6.80% |
| 令和3年度(2021) | 229,900 | 11,448 | 4.98% | 17,513 | 7.62% |
| 令和4年度(2022) | 245,704 | 11,402 | 4.64% | 18,447 | 7.51% |
| 令和5年度(2023) | 251,384 | 11,173 | 4.44% | 19,638 | 7.81% |
| 令和6年度(2024) | 259,517 | 10,801 | 4.16% | 21,478 | 8.28% |
令和元年度から令和6年度で、申請は223,042件→259,517件(16.4%増)、却下率は6.73%→8.28%。取下げ率は4.94%→4.16%と下がりました。
② 129機関の全表(並べ替え・絞り込みできます)
見出しを押すと並べ替わります。お住まいの自治体名を入れて探せます。都道府県の行には、その県にある指定都市・中核市は入っていません(それぞれ別の行として載っています)。たとえば「秋田県」の行は秋田市を除いた秋田県です。
| 自治体 | 種別 | 申請 件数 |
却下率 | 取下げ率 | 開始 世帯数 |
申請 千対 |
保護率 千対 |
未処理 年度末 |
|---|
表は枠の中でスクロールします(129行)。
「申請(人口千対)」は、その自治体の人口1,000人あたり年に何件の申請が起きたか。人口は保護率からの逆算なので0.5%ほどの誤差を含みます。「年度末未処理」は年度をまたいで審査中だった件数です。
③ 却下率が高い自治体・低い自治体
年300件以上の申請がある124機関にしぼっています(件数が少ないと率が跳ねるため)。
却下率が高い15機関
| # | 自治体 | 種別 | 申請件数 | 却下率 | 申請(人口千対) | 保護率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 秋田県(秋田市を除く) | 都道府県 | 1,159 | 23.4% | 1.92 | 12.4 |
| 2 | 高知県(高知市を除く) | 都道府県 | 1,065 | 22.0% | 3.12 | 18.4 |
| 3 | 青森県(八戸市・青森市を除く) | 都道府県 | 2,159 | 21.4% | 3.12 | 22.2 |
| 4 | 新潟市 | 指定都市 | 1,548 | 21.1% | 2.02 | 15.4 |
| 5 | 岩手県(盛岡市を除く) | 都道府県 | 1,464 | 20.2% | 1.69 | 9.0 |
| 6 | 鳥取県(鳥取市を除く) | 都道府県 | 632 | 19.6% | 1.82 | 10.5 |
| 7 | 静岡市 | 指定都市 | 1,597 | 19.6% | 2.37 | 14.1 |
| 8 | 青森市 | 中核市 | 720 | 17.4% | 2.77 | 29.7 |
| 9 | 愛媛県(松山市を除く) | 都道府県 | 1,162 | 17.0% | 1.49 | 10.6 |
| 10 | 船橋市 | 中核市 | 1,177 | 16.8% | 1.81 | 14.3 |
| 11 | 島根県(松江市を除く) | 都道府県 | 427 | 16.2% | 0.96 | 6.0 |
| 12 | 岡山県(倉敷市・岡山市を除く) | 都道府県 | 675 | 16.0% | 1.03 | 5.7 |
| 13 | 沖縄県(那覇市を除く) | 都道府県 | 3,980 | 16.0% | 3.45 | 22.8 |
| 14 | 神戸市 | 指定都市 | 4,420 | 15.5% | 2.96 | 27.9 |
| 15 | 山形県(山形市を除く) | 都道府県 | 877 | 15.3% | 1.14 | 7.2 |
却下率が低い15機関
| # | 自治体 | 種別 | 申請件数 | 却下率 | 申請(人口千対) | 保護率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 寝屋川市 | 中核市 | 751 | 1.7% | 3.35 | 33.5 |
| 2 | 岐阜市 | 中核市 | 605 | 2.3% | 1.53 | 14.6 |
| 3 | 鹿児島市 | 中核市 | 1,278 | 2.4% | 2.19 | 25.0 |
| 4 | 八尾市 | 中核市 | 804 | 2.5% | 3.10 | 30.6 |
| 5 | 東大阪市 | 中核市 | 1,726 | 2.7% | 3.56 | 33.3 |
| 6 | 相模原市 | 指定都市 | 1,767 | 3.2% | 2.44 | 19.6 |
| 7 | 大分市 | 中核市 | 846 | 3.2% | 1.80 | 17.1 |
| 8 | 甲府市 | 中核市 | 342 | 3.2% | 1.86 | 15.0 |
| 9 | 長崎市 | 中核市 | 847 | 3.3% | 2.18 | 29.4 |
| 10 | 越谷市 | 中核市 | 502 | 3.4% | 1.48 | 13.2 |
| 11 | 八王子市 | 中核市 | 1,387 | 3.5% | 2.47 | 18.8 |
| 12 | 金沢市 | 中核市 | 476 | 3.6% | 1.04 | 9.2 |
| 13 | 宇都宮市 | 中核市 | 752 | 3.6% | 1.47 | 16.0 |
| 14 | 姫路市 | 中核市 | 862 | 3.6% | 1.66 | 15.8 |
| 15 | 一宮市 | 中核市 | 508 | 3.7% | 1.35 | 9.9 |
④ 「取り下げ」も見ておく
申請を出したあとに取り下げた件数です。全国では申請の4.16%。他の制度が使えることになった、転居した、といった理由もありますが、取下げは福祉事務所の側から促すこともできる手続きです。ここが高い機関は、却下率だけを見ると実態より穏やかに見えます。
| # | 自治体 | 種別 | 申請件数 | 取下げ率 | 申請(人口千対) | 保護率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 船橋市 | 中核市 | 1,177 | 11.5% | 1.81 | 14.3 |
| 2 | 秋田市 | 中核市 | 544 | 10.8% | 1.84 | 17.6 |
| 3 | 久留米市 | 中核市 | 795 | 9.6% | 2.64 | 21.6 |
| 4 | 鹿児島県(鹿児島市を除く) | 都道府県 | 1,756 | 8.9% | 1.86 | 14.5 |
| 5 | 那覇市 | 中核市 | 1,676 | 8.7% | 5.41 | 43.7 |
| 6 | 佐世保市 | 中核市 | 408 | 8.3% | 1.74 | 19.3 |
| 7 | 大分市 | 中核市 | 846 | 7.6% | 1.80 | 17.1 |
| 8 | 長崎市 | 中核市 | 847 | 7.6% | 2.18 | 29.4 |
| 9 | 長崎県(佐世保市・長崎市を除く) | 都道府県 | 1,184 | 7.4% | 1.88 | 14.3 |
| 10 | 福岡県(久留米市・北九州市・福岡市を除く) | 都道府県 | 4,948 | 7.4% | 2.22 | 21.1 |
| 11 | 宮崎県(宮崎市を除く) | 都道府県 | 1,344 | 7.4% | 2.10 | 13.3 |
| 12 | 熊本市 | 指定都市 | 2,298 | 7.2% | 3.11 | 19.8 |
⑤ 2つの軸で置くと、4つの型に分かれる
横軸に「申請の起きやすさ(人口千対1.81件が中央値)」、縦軸に「却下率(中央値8.58%)」を取ると、124機関は4つに分かれます。どれが良い・悪いと決められるものではありませんが、自分の住む街がどこにいるかは知っておいて損がありません。かっこ内は各型で申請件数が多い順の3機関です。
中央値で割っただけの分類です。申請が少ない側の却下率の中央値は9.0%、多い側は6.9%。差はありますが相関は-0.15と弱く、「申請が少ない地域は必ず却下も多い」とは言えません。
⑥ 却下されたときにできること
- 審査請求:却下の通知書を受け取った日の翌日から3か月以内に、都道府県知事あてに審査請求ができます(生活保護法第64条・行政不服審査法第18条)。市・区の福祉事務所が出した却下でも、宛先は市ではなくその上の都道府県です(政令市・中核市の処分も同じ)。書式は自由で、費用はかかりません。
- 再申請はいつでもできる:申請権に回数制限はありません。収入が減った・貯金が尽きた・病気になったなど事情が変われば、何度でも出せます。
- 通知書をもらう:却下は必ず書面で通知されます。口頭で「無理です」と言われただけなら、それは却下処分ではありません。申請書を出し、書面で結果を受け取るところまでが手続きです。
- 決定の期限:申請から原則14日以内(調査に時間がかかる場合は最長30日)に通知が来ます。この表の「年度末未処理」は、年度をまたいで審査中だった件数です。
- ひとりで行かない:お住まいの地域の生活困窮者自立支援の相談窓口、法テラス、支援団体に同行を頼めます。
⑦ この数字の限界(大事なところ)
- 申請に至らなかった相談は数字に出ません。この表にあるのは「申請書が受理された件数」です。窓口での相談件数は被保護者調査では公表されていません。
- 申請者の顔ぶれの違いが入ります。資産や収入のある人の申請が多ければ、審査の姿勢が同じでも却下率は上がります。
- 都道府県の行に指定都市・中核市は含まれません。県まるごとの数字ではありません。表では「○○を除く」と書いています。
- 年度累計です。申請した月と結果が出た月がずれるため、「申請件数=却下+取下げ+開始」にはぴったり一致しません。
- 保護開始には申請によらないものが混ざりえます。だから開始÷申請を主役の指標にしていません。
- 人口は保護率からの逆算です。保護率は小数第1位までの公表なので、人口千対の値は0.5%ほどの誤差を含みます。僅差の順位に意味はありません。
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コメント(自治体ごとの運用の情報交換)
申請時の体験や、お住まいの自治体の窓口の様子を共有いただけると、同じ立場の方の助けになります。個人が特定される情報はお書きにならないでください。
出典
- 厚生労働省「被保護者調査(月次調査・確定値)」第18表 保護の申請、取下げ、却下、未処理件数、保護開始世帯数…,都道府県-指定都市-中核市×市部-郡部別(令和元年度〜令和6年度) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/74-16b.html
- 厚生労働省「被保護者調査(月次調査・確定値)」第9表 被保護実人員数及び保護率(人口千対),都道府県-指定都市-中核市×月・1か月平均別(令和6年度)
- 総務省「全国地方公共団体コード」(市がどの都道府県にあるかの対応に使用) https://www.soumu.go.jp/denshijiti/code.html
- 厚生労働省「生活保護制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html